虫歯とはミュータンスと呼ばれる細菌が産生する酸によって歯が溶かされ、穴が開いた状態「う蝕」またはそのような状態になっている歯を指して「虫歯」と呼んでいます。 歯周病と同じように感染症として位置付けられており、初期の段階では自覚症状がないため自分では気付かないことが多いのが特徴です。
エナメル質が酸で溶かされ始めます。これを脱灰と言います。この段階では、ほとんどの人は虫歯ができたことに気付きません。虫歯の周囲はやわらかくなっていることが多く、いったんでき始めると急速に進行していきます。
虫歯がC2に達しますと、エナメル質のすぐ下にある「象牙質」にも実質欠損を認めるようになります。この頃になると冷たいものや甘いものがしみるようになったり、自発痛(何もしなくても発生する痛み)なども出始めます。多くの場合、虫歯と気がつくのはこの段階になってからです。
C2の虫歯がさらに放置され、象牙質によって保護されていた歯の神経「歯髄」にまで達した状態です。虫歯が歯髄にまで達すると、温かいものがしみるようになったり、激しい自発痛や咬合痛がみられます。
歯冠の大部分は崩壊して無くなり、歯根のみが残っている状態です。残念ながら、この段階になると歯を残すことは不可能と言ってもよいでしょう。
食事をしてから約3分ほどで虫歯の活動が始まります。その一番の原因は糖分です。
糖は砂糖だけではなく、ご飯やパンなど非常に多くの食品に含まれています。
歯の表面に付着した歯垢(プラーク)の中で、バイ菌によって酸が作られます。
酸が歯を溶かす程度になると、歯の表面からはミネラル成分やカルシウム、リンが溶け出します。この状態を脱灰と言い、虫歯の活動開始となるわけです。
ですが、食後、唾液によって酸を中和したり、洗い流す作用により、歯垢や酸は中性方向に向かい、唾液の中のミネラルが戻り始め、虫歯になりやすい環境からなりにくい環境へ戻り始めます。これを歯の再石灰化と言います。
食事を摂らないわけにはいきません。でも食事をするたびに脱灰は起こります。
重要なのは、お口の中を再石灰化しやすい状態にすることがとても大切なのです。
歯の再石灰化を促進させるために重要なことは、お口の中のphが下がっている時間を短くするということです。摂取する食品の種類に気を遣うというよりは、摂取する回数や時間帯に気を遣ったほうが良いでしょう。
穴が開いてしまうと自然に治ることは絶対にありません!
初期の段階であれば口内環境を整えることによって、歯の再石灰化が進み、削らずに治すことができます。そのためには定期的に健診を受け、早期発見、早期治療をお勧めいたします。
フッ素(正確にはフッ化物)は、虫歯の天敵です!
フッ素にはムシ歯の原因である歯垢(プラーク)働きを抑え、歯質を強化し、ムシ歯の発生を防ぐ効果があります。子供の場合、歯はまだ未成熟で不安定なため酸に溶けやすい弱い状態ですが、フッ素の働きで歯の結晶構造の中にフッ素が取り込まれ、酸に溶けにくい丈夫な歯質にしてくれます。
一方、大人の歯の場合は歯の表面への汚れが付着しにくくなるという効果があります。
また、歯周病や部分入れ歯などの使用によって、顎の骨や歯ぐきが痩せてしまい、本来なら歯ぐきで覆われているはずの歯の内部のセメント質や象牙質が露出してくることがあります。セメント質や象牙質はエナメル質(歯茎から上の歯の表面部分)よりも弱く、虫歯になりやすいため、フッ素の働きで虫歯のリスクを下げることに役立つとされています。
保育園や学校など、みんなで一緒にできるむし歯予防です。
フッ素配合の洗口液でブクブクうがいを行い、歯のエナメル質表面にフッ化物を作用させて、虫歯を予防する方法です。ブクブクうがいが上手のできる4歳頃から永久歯が生えそろう中学生まで行えば、むし歯を約半分に減らせます。
健康教育の一環として園や学校で行うと継続しやすく、より効果が期待できます。
日本全国では約45万人が行っています。
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※NPO法人日本むし歯予防フッ素推進会議・WHO口腔保険協力センター・財団法人8020
推進財団共同調査 2008年3月現在
洗口液を5〜10mlお口に含み、
液がよく歯にいきわたるように
1分間ブクブクうがいを
します。
うがいがおわったら吐き出します。
効果を高めるため30分は
うがいや飲食を控えましょう。
以上を毎日行います。
ご家庭でも行えますので、洗口液のご購入など、医院に御相談ください。
歯科医院や保健センターなどで歯がはえ始める1歳頃の赤ちゃんからでも始められるむし歯予防です。歯科医院などでご家庭では使えない高濃度のフッ素を歯に塗る方法です。 お口の状態によって異なりますが、年に2〜4回のフッ素塗布を継続することで、高いむし歯予防効果が得られます。
唾液で湿らないようにしてフッ素を塗ります。
効果を高めるために、塗った後30分間は
うがいや飲食を避けます。
ご家庭や学校、職場など、子供から大人まで歯磨きで行うむし歯予防です。
毎日の歯磨きにフッ素入り歯みがき剤を使用することで、フッ素で歯が守られます。
歯ブラシの毛先に半分程度フッ素入り歯みがき剤をつけてみがきます。
デンタルフロスや歯間ブラシに
液状やフォーム(泡)状の
フッ素入り歯みがき剤をつけると
歯と歯の間のむし歯予防に効果的です。
また、歯みがき剤を使わずに「からみがき」をしている方は、一通りみがいた後、仕上げとしてフッ素入り歯みがき剤を使用してください。
歯みがき後にすすぐ場合は1回程度にしましょう。あまりすすぎ過ぎるとフッ素の効果が落ちてしまいます。
正しい歯みがき方の仕方については医師、歯科衛生士にご相談ください。
パッケージに「フッ素入り」
成分欄に
「モノクルオロリン酸ナトリウム(MFP)」
「フッ化ナトリウム(NaF)」
「フッ化第一スズ」
上記の表示を目安に、スーパーや薬局などで購入できます。
奥歯の溝は複雑な形をしていて細菌や汚れがたまりやすく、虫歯になりやすいのです。 また溝は歯ブラシの毛先よりも細いところがあるなど、歯磨きで歯垢を完全に取り除くことは難しいのです。
シーラントは虫歯になりやすい奥歯の溝に細菌や汚れが入りこまないように合成樹脂などをつめてむし歯を予防する方法です。
※歯の治療に用いる材料と同じ性質のものです。有効性と安全性について国の認可を受けています。
今まで、虫歯の治療の際には、“キーン”と嫌な音がするタービンというドリルを使用し、歯を削っていました。このタービン(ドリル)は歯を削るのに非常に優れた能力を発揮しますが、あの音や、削る器械の振動から歯科治療を遠ざける原因でもありました。
しかし、今はほとんど削らないで済む治療法があります。
それは、最新の虫歯治療として注目されている、ドックベストセメント治療です。
歯をほとんど削らないので治療の時の痛みがな無く麻酔が必要ありません。
また、大きな、神経に近い虫歯も神経を取らずにお薬を詰めて治療をするので、歯を大きく削る必要がありません。
虫歯菌を殺菌する成分を半永久的に出し続けるため、再発を予防してくれるのです。
嫌な音や振動がなく、歯科治療が嫌いな方にとっては画期的な治療となっています。
3Mix法とは、3種類の抗生物質を混ぜ合わせた抗菌剤を使って、虫歯菌を削る量を最小限にとどめ、残った虫歯菌を薬の力で無菌化するという虫歯治療です。
これまでは、削り取るしかなかった深いむし歯や、神経の近くにまで達してしまった虫歯も、削る量を減らすことができます。
また、抗菌剤で患部を殺菌するため、歯の神経をとらなければならないような大きい虫歯でも歯の神経を残せる可能性が高くなります。結果的に歯の寿命を伸ばすことにもつながります。
※3Mix法は抗生物質のため、人によってはアレルギーなどの可能性が完全に無いとは言えず、また妊娠中は使用できません。 3Mix法は、保険適応外の治療法です。治療を希望される方は医師にご相談ください。